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幽霊日記22

「レモンくらいの大きさなのよ」

女医が言う。
拳を握りレモンを作って額に当てる。

「そんなの入ってるんだから、お手上げ」

あっさりと布告する。乾いた笑みが逆に物悲しい。

「無理ね。無理。望みなんて無い。本人も自覚してると思う。お寺も決めてたみたいだし」

溜息を吐く。

「どうして見ず知らずのしかも亡くなった人の為に一生懸命だったか私はよくわからないけど、でもたぶん…そうすることで心の安定が欲しかったんじゃないかな」

逃避という言葉を飲む。
俯いた顔が上がる。少女は泣いていた。女医が自分のせいかと慌てる。

「ご飯奢ってくれたんですぅ…。何度も何度も奢ってくれてぇ。ウニがすっごくおいしくてぇ…それからぁウニがぁ…ウニぃ…うにゅうぅぅ…」

「わかったから。はいはい。ウニはおいしいわよねぇ」

レースのハンカチで垂れる鼻を拭ってやる。女医の美しい顔が心なしか引きつる。

「幽霊っていると思いますか?」

唐突に少女が言った。
女医は少し考えて答えた。

「そんなものが見えるまでにもう末期だったのよ」

by zan9h | 2008-03-09 21:54 | 幽霊日記 | Comments(0)