パルス⑨
車を降りる水浦と賀集
廃墟同然のマンション(1階がコンビニだった形跡)、傍に貯水池がある
「また水辺…。井出幹人って人は水の傍が好きみたいですね。あ、水浦さん?」
池の縁に立つ水浦
パンの欠片と銀色の液体の入った小瓶を懐から取り出す
「確か探し物を見付けるには水銀に浸したパンだったよね」
ひとつまみのパンを池に放る
パンが水面を円を描いて移動する
「とまった…。ん?なんだ?」
パンが沈み、ゴポゴポと泡が立ち、何かが浮かんでくる
それはビニールに包まれており、人の形をしている
「し、死体!?」
「夏見君、すまないが先に行ってくれないか。すぐに追い付くから」
「水浦さん…」
水浦がビニールに包まれた死体を引き上げ、抱きしめる
「楓…こんなところでずっと…。寂しかっただろうね…」
P(間)
マンションの一室
賀集がドアノブを回す
「開いてる…」
ドアが開く
フローリングの部屋、テーブルの上にCDプレイヤー
曲(ジュリー・クルーズのナイチンゲール)が流れている
「この部屋は…」
「やぁ、キミは誰に会いに来たんだい?」
開け放たれた窓の外、ベランダに加賀美恭二が居る
「加賀美さん!」
「こんばんは、夏見君」
「加賀美さん…井出先生は捕まりました。あなたが何をしようとしているのかはわかりませんが、一緒に警察に行きましょう」
「夏見君、人はどうして自分の気持ちを開こうとはしないのだろうね。真実を知りたいくせに。なぜ、思いを伝えようとしないのだろう。…キミも本当は真実を知りたいんだろ?」
「…加賀美さん、あなたもパルスの被験者なんですか?」
「被験者?それは違うよ。ボクは自ら望んだんだ。無意味な生活から脱却するために」
「なら、岡崎椎名や稲生綾子は?彼女達も自分で望んだんですか?」
「それは彼女達に直接聞ばいい。会いたいんだろ、彼女達に」
「どういうことですか?いるんですか、ここに…」
「そう。さぁ、パルスを送るよ」
加賀美が睨む
ノイズ
「な、何?頭の中に何かが…何かが入って…う、うあ、あっ…」
ドアを蹴り開け、水浦登場
頭を押さえ苦しがる賀集に駆け寄る
「夏見君!」
「水浦さん…」
「大丈夫か?…きさま、夏見君に何をした?」
水浦が加賀美に向かい拳銃を構える
「あなたは誰に会いたいんだい?」
「何?」
「水浦さんだめだ、目を逸らして!」
冷笑する加賀美、水浦が目を見開き頭を押さえる
「カハッ…頭が…ざらざらして…なんだ?どうして…楓?楓なのか…?ああ…楓…今行くよ…」
水浦が走り出しガラス戸に衝突、ガラスが派手に割れて水浦が倒れる
「水浦さん!くそっ、水浦さんに何をした!」
「そう怖い顔しないで。友達だろ?…パルスを送ったんだ。脳の奥を震わせて、彼が見たがってたものを見せてあげたんだよ」
「な!?それが、その超能力がパルス…?」
「超能力?そんな下卑た言い方はよしてくれよ。…人は不器用だから、真実からどんどん遠ざかる。だからせめて夢の中で願いを叶えてやっているんだ」
「まるで神にでもなったような言い草だな!」
「キミも毎日の生活に意味を見出せないでいたんだろ?さぁ、私が救ってあげるよ」
賀集の前を何かが飛び出し、加賀美に組み付く
「うぐっ…!」
ボブカットの女が加賀美に抱き付いている
「き、きみは?」
「助けてあげる。あなたの願いをまだ叶えていないから」
「は、はなせ!」
「だめ、私たちはここにいてはいけないの」
ボブカットの女が加賀美に腕を絡めたままベランダの手摺りから身を乗り出す
「そっちに行ってはだめだ、綾子さん!」
「言ったでしょ?私はナイチンゲール。その名前の可哀そうな女の子はもういない。だからその名前を呼ばないであげて」
加賀美がもがく
「や、やめろぉ!」
「だめ。あなたの願いでは誰も幸せになれないから」
「だからって…だからって、死ぬ必要はないよ」
「苦しみから解放してって彼女が私に願った。でもここは悲しいことが多すぎるし、逃げることも出来ない。彼女はもうもがくことに疲れていた。だから、私に願いを伝えた」
「それは岡崎椎名さんのこと?…今はいいよ。それよりこっちに来るんだ。そんなところにいたら危ないよ」
稲生綾子が微笑む
「大丈夫。私は飛べるから」
稲生綾子、加賀美恭二を連れて飛び降りる
「綾子さん!…そんな、そんな、どうして……」
P(間)
廃墟同然のマンション(1階がコンビニだった形跡)、傍に貯水池がある
「また水辺…。井出幹人って人は水の傍が好きみたいですね。あ、水浦さん?」
池の縁に立つ水浦
パンの欠片と銀色の液体の入った小瓶を懐から取り出す
「確か探し物を見付けるには水銀に浸したパンだったよね」
ひとつまみのパンを池に放る
パンが水面を円を描いて移動する
「とまった…。ん?なんだ?」
パンが沈み、ゴポゴポと泡が立ち、何かが浮かんでくる
それはビニールに包まれており、人の形をしている
「し、死体!?」
「夏見君、すまないが先に行ってくれないか。すぐに追い付くから」
「水浦さん…」
水浦がビニールに包まれた死体を引き上げ、抱きしめる
「楓…こんなところでずっと…。寂しかっただろうね…」
P(間)
マンションの一室
賀集がドアノブを回す
「開いてる…」
ドアが開く
フローリングの部屋、テーブルの上にCDプレイヤー
曲(ジュリー・クルーズのナイチンゲール)が流れている
「この部屋は…」
「やぁ、キミは誰に会いに来たんだい?」
開け放たれた窓の外、ベランダに加賀美恭二が居る
「加賀美さん!」
「こんばんは、夏見君」
「加賀美さん…井出先生は捕まりました。あなたが何をしようとしているのかはわかりませんが、一緒に警察に行きましょう」
「夏見君、人はどうして自分の気持ちを開こうとはしないのだろうね。真実を知りたいくせに。なぜ、思いを伝えようとしないのだろう。…キミも本当は真実を知りたいんだろ?」
「…加賀美さん、あなたもパルスの被験者なんですか?」
「被験者?それは違うよ。ボクは自ら望んだんだ。無意味な生活から脱却するために」
「なら、岡崎椎名や稲生綾子は?彼女達も自分で望んだんですか?」
「それは彼女達に直接聞ばいい。会いたいんだろ、彼女達に」
「どういうことですか?いるんですか、ここに…」
「そう。さぁ、パルスを送るよ」
加賀美が睨む
ノイズ
「な、何?頭の中に何かが…何かが入って…う、うあ、あっ…」
ドアを蹴り開け、水浦登場
頭を押さえ苦しがる賀集に駆け寄る
「夏見君!」
「水浦さん…」
「大丈夫か?…きさま、夏見君に何をした?」
水浦が加賀美に向かい拳銃を構える
「あなたは誰に会いたいんだい?」
「何?」
「水浦さんだめだ、目を逸らして!」
冷笑する加賀美、水浦が目を見開き頭を押さえる
「カハッ…頭が…ざらざらして…なんだ?どうして…楓?楓なのか…?ああ…楓…今行くよ…」
水浦が走り出しガラス戸に衝突、ガラスが派手に割れて水浦が倒れる
「水浦さん!くそっ、水浦さんに何をした!」
「そう怖い顔しないで。友達だろ?…パルスを送ったんだ。脳の奥を震わせて、彼が見たがってたものを見せてあげたんだよ」
「な!?それが、その超能力がパルス…?」
「超能力?そんな下卑た言い方はよしてくれよ。…人は不器用だから、真実からどんどん遠ざかる。だからせめて夢の中で願いを叶えてやっているんだ」
「まるで神にでもなったような言い草だな!」
「キミも毎日の生活に意味を見出せないでいたんだろ?さぁ、私が救ってあげるよ」
賀集の前を何かが飛び出し、加賀美に組み付く
「うぐっ…!」
ボブカットの女が加賀美に抱き付いている
「き、きみは?」
「助けてあげる。あなたの願いをまだ叶えていないから」
「は、はなせ!」
「だめ、私たちはここにいてはいけないの」
ボブカットの女が加賀美に腕を絡めたままベランダの手摺りから身を乗り出す
「そっちに行ってはだめだ、綾子さん!」
「言ったでしょ?私はナイチンゲール。その名前の可哀そうな女の子はもういない。だからその名前を呼ばないであげて」
加賀美がもがく
「や、やめろぉ!」
「だめ。あなたの願いでは誰も幸せになれないから」
「だからって…だからって、死ぬ必要はないよ」
「苦しみから解放してって彼女が私に願った。でもここは悲しいことが多すぎるし、逃げることも出来ない。彼女はもうもがくことに疲れていた。だから、私に願いを伝えた」
「それは岡崎椎名さんのこと?…今はいいよ。それよりこっちに来るんだ。そんなところにいたら危ないよ」
稲生綾子が微笑む
「大丈夫。私は飛べるから」
稲生綾子、加賀美恭二を連れて飛び降りる
「綾子さん!…そんな、そんな、どうして……」
P(間)
by zan9h | 2009-11-29 20:50 | パルス | Comments(0)