カテゴリ:幽霊日記( 23 )

幽霊日記23

鼻血が止まらない。
頭が痛い。

あー。ダメだな。

窓を開ける。春の風が心地良い。
いい天気だ。

誠実でありたい。吉野弘だったか。
白い雪のように真っ新になれればいい。

雪が降る。

雨が降る。

星が降り注ぐ。

ダメだ。空が暗いよう。

─ おまえは自分の人生に満足だったのか?

どこかで聞いた台詞。首を擡げて見る。喉に血が溜まって苦しい。

海賊。
パイレーツ。ディップの携帯のデップ。

なんで?
ニヤリと笑う髭面の海賊。人差し指を額に突き付けられる。

積尸気冥界波ーっ!

マ・ジ・でーっ…!





空は青い。窓から見上げる空は悲しいくらいに青く澄み渡る。

まるっこいのがいる。
まあるいのにちぢれ毛がぴょろん。

少し太ったか?前よりちょっとだけでかい気がする。

ふよふよ漂うまるっこいの。
幽霊の親友。
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by zan9h | 2008-03-11 21:29 | 幽霊日記 | Comments(0)

幽霊日記22

「レモンくらいの大きさなのよ」

女医が言う。
拳を握りレモンを作って額に当てる。

「そんなの入ってるんだから、お手上げ」

あっさりと布告する。乾いた笑みが逆に物悲しい。

「無理ね。無理。望みなんて無い。本人も自覚してると思う。お寺も決めてたみたいだし」

溜息を吐く。

「どうして見ず知らずのしかも亡くなった人の為に一生懸命だったか私はよくわからないけど、でもたぶん…そうすることで心の安定が欲しかったんじゃないかな」

逃避という言葉を飲む。
俯いた顔が上がる。少女は泣いていた。女医が自分のせいかと慌てる。

「ご飯奢ってくれたんですぅ…。何度も何度も奢ってくれてぇ。ウニがすっごくおいしくてぇ…それからぁウニがぁ…ウニぃ…うにゅうぅぅ…」

「わかったから。はいはい。ウニはおいしいわよねぇ」

レースのハンカチで垂れる鼻を拭ってやる。女医の美しい顔が心なしか引きつる。

「幽霊っていると思いますか?」

唐突に少女が言った。
女医は少し考えて答えた。

「そんなものが見えるまでにもう末期だったのよ」
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by zan9h | 2008-03-09 21:54 | 幽霊日記 | Comments(0)

幽霊日記21

うららかな春の日差しの下。
般若心経が響き渡る。

グフもろくに扱えない似非ノリスが徳を積んだ立派な坊主に見える。
まあ。実際その通りなんだけど。

瓶の中でまるっこいのが震えてる。
一緒に外出すんのは初めて。そんで最後。きっと。

墓が知れたら参ってやろう。
ばあさんに頼んで昆布の煮物でも持ってってやるよ。ディップや愉快な仲間とやらも誘ってみる。ついでに白井くんも連れてくから言いたいことあんなら言ってやるといいさ。

栓を抜く。
するりと飛び出し上へ。上へ。

さようなら。楽しかった。

銃を向けられる。
見覚えある強面。無認可金融会社社員。お亡くなりになられたのでは?

仲間が消された。俺も駄目だ。せめて道連れにしてやる。

マジか。マジで。マジかいな。

乾いた破裂音。

額が落ちてノリスの禿頭に直撃した。
男が取り押さえられる。素早い手際。そりゃ周り警官だらけだもの。

見た。

男の指が引き金に掛かる一瞬。
まるっこいのが銃口に飛び込んだ。

当たるはずの弾が反れた。まるっこいのは粉々に砕けてまるじゃなくなった。

バカだな。折角成仏できたのに。バカだ。こんな命救いやがって。
馬鹿野郎。
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by zan9h | 2008-03-08 23:00 | 幽霊日記 | Comments(0)

幽霊日記20

まるい。
まるいなぁ。あとぴょろんと伸びたちぢれ毛。

みんなと遊ぶのが好きだ。
遊ぶのには金がいる。だから借りた。借りて借りまくった。
遊んだ。楽しい毎日。

気になってた。駐輪場に置いてある原チャリ。キーが付いたままずっとある。
きっと神様のプレゼント。ラッキー。

油断した。彼女とよろしくやってるとこに前の女が乗り込んできた。やべ。逃げろー。
そういやばあさんと約束してたっけ。早く帰って玄関直してやんねーとな。

閃光が走った。破裂する音がした。白い雪が舞い上がる。そんで…暗転。

まるっこいのがふよふよ漂ってる。
天井の角に当たってはまた違う角へ。繰り返し。

とりあえず借金はチャラにしてやった。
危ない橋だった。マジで。大いに感謝するように。

砂糖水にすがるまるっこいの。

だいぶ春めいてきた。雪が降ることもまずあるまい。
もう。いいよね。
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by zan9h | 2008-03-07 21:45 | 幽霊日記 | Comments(0)

幽霊日記19

キャバクラ嬢に貢いだ。

田舎から出て右も左もわからない中連れてこられた。
右も左もわからなく不安で死にそうな自分を彼女は癒してくれた。

まさに砂漠のオアシス。

週一で通う。オアシスちゃんはいつも優しい。乾いた心が潤う。
常連になった。

悩みがあるの。ある日オアシスちゃんに相談される。
弟の入学費が払えない。10万ほど用立てる。甚く感謝される。

母が交通事故にあった。30万。

父の会社が倒産しそう。50万。

祖父が。祖母が。いとこが。甥に姪が。
大切な学費が磨り減っていく。

わかっている。それでも彼女の笑顔が見たかった。それだけのはずだった。
これで最後。そしたら結婚しようね。まさに殺し文句。

ハイリターンを得るにはハイリスクが必要だ。

大金を都合するため、バイトをした。ヤクザの運び屋。
リターンはハイだった。リスクもハイだった。

この世はバランスで成り立っている。天秤が片方に傾けば、それを修正する力が働く。
バイト先にはシマを争う相手がいた。
愛車を使ったのが良くなかった。ナンバーでバレた。だから放置した。
知ってか知らずかオアシスちゃんは店から消えた。やばい。逃げろー。

白井広人はかく語りき。
要するに、パクった原チャリが良くなかったわけだ。

マラドーナとラーメンを啜る。
折角リサーチしたインド料理屋は何故か店を畳んでいた。

カレーでない不満をぶつけられるのを覚悟したが、意外に何も責められなかった。むしろ褒められる。早くて美味いは良いことらしい。
ディップに後で礼をしないとな。麩菓子でいいか。

溺死体を解剖した。

食事中に何を言い出すのか。ドクトルジョークですか。

銃創があった。身元は判明している。無認可の金融会社社員。

こわーい。こわーい。
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by zan9h | 2008-03-06 21:40 | 幽霊日記 | Comments(0)

幽霊日記18

梅昆布茶。
これお茶じゃなく吸い物だよなー。

ばあさんと茶を啜る。
付け合せの塩昆布がしょっぱい。

どっちも佐々木緑が好きだった物。
昆布の佃煮なんか持って行ってやるとたいそう喜んだそうな。

どんだけ好きなんだ。

ばあさんに鍵を借りる。
何も無い部屋で梅昆布茶をしばいて待つ。

定刻より1時間と20分ほど遅れて現れた。

金は用意したか?

挨拶も無しのストレート。
ニヤニヤしてノーと答える。殴られる前に事情を話す。

良い儲け話がありますぜ、旦那。

事の詳細はこう。

ある場所にお宝があります。
嗅ぐと素敵な気持ちになる魔法の葉巻です。末端でほにゃらら。
隠し場所を教えるのであとはお好きに。

いまいち信用されないので煙草をあげた。インドの人がくれたやつ。
吟味に一服吐く。煙を燻らせること数度の後、親指を突き出された。

交渉成立。
かくして佐々木緑の借金はチャラと相成りました。
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by zan9h | 2008-03-05 21:01 | 幽霊日記 | Comments(0)

幽霊日記17

カレーは疎い。
チェーン店以外の店をよく知らない。

助っ人を呼ぶ。
魚人海賊ならこういうのに詳しいに違いない。食ってばっかだし。
一応同性。種族は違えど女性の気持ちはわかることでしょう。

中華の店に連れてこられた。

なんだろ。
国が違う気がする。

ラーメンを食す。
うまい。なんか悔しい。

鯉の目を潰してやろうかと思ったけど、やめる。
麺を啜る顔がちょっと可愛い。たぶん気のせい。

事情を話し、やわらかく諭す。

カレーって隣の国じゃね?

インド料理屋に来た。
ディップが愉快な仲間達(佐々木緑含む)とすっげーたま~に行くという店。
年に1、2回。行ってねーじゃん。

ターバン巻いたそれっぽい店員にお勧めを聞く。
ニヤニヤされる。

なんか見たことある。
アレだ。以前訪ねたアパートの部屋の住人。怪しい煙草くれた人。

鯉の目見開いたディップに小突かれる。指差す先を見る。

ターバン巻いた青年。どうもターバンはここの制服みたいなものらしい。
顔が茶褐色でそれっぽい。
でも首の付け根は色白。ドーラン?

白井くん。

鯉の口が呟いた。

白井広人。ニュージーランドで牧場経営を夢見る専門学校生。
佐々木緑が盗んだバイクの持ち主で…たぶんヤクザから逃げている。
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by zan9h | 2008-03-04 21:16 | 幽霊日記 | Comments(0)

幽霊日記16

この世には大きく分けて二種類の人間がいる。
200万が痛い人間。そうでない人間。

200万あればグァムと10往復くらいできるよね。
やらないけど。

医者は金持ちと相場が決まっている。

マドンナ。
80年代のミュージックシーンで一世を風靡した。
高い歌唱力もさることながら、ボンテージなど過激なコスチュームに身を包んだ抜群のプロポーションと誘惑するような美貌はセックスシンボルとして今尚ファンを虜にする。
まさに聖母の名を冠するに相応しいアーティストだ。

彼女もマドンナと呼ばれていた。
マラドーナと呼び間違った。

その時見せた彼女の、呆気に取られた隙だらけの表情は結構気に入っている。
だからマラドーナ。それで良い。

食事に誘った。
ご要望を伺う。

カレー。忙しい人間はカレーと相場が決まっているらしい。

休みをわざわざ取るんだから、一番うまいカレーを食わせろ。

チェーン店を挙げる。速攻で却下。
困ったなー。

金策は一日にして成らず。カレーの道も一歩から。
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by zan9h | 2008-03-02 10:00 | 幽霊日記 | Comments(2)

幽霊日記15

毒をもって毒を制す。
強面には強面ぶつけりゃいいんじゃねー理論。

寺に行く。

フランクに名を呼ぶ。
箒で突きを食らう。グフッ。(洒落)

用件を簡潔に述べる。

ちょっとヤクザと闘ってみない?

苦い顔。
千円渡す。叩き返された。

顔はノリスでも所詮はグフも扱えないただの生臭坊主か。
思ったことを口に出したら殴られた。

鎮魂祭。
身元不明の死者を供養する。
警察の依頼で毎年この時期やっている。持ち回りで今年はここ。

幽霊を成仏させたい。
前に言ったことにノリスが気を回し教えてくれた。

この世の未練を断つ。強制的に。
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by zan9h | 2008-02-27 21:31 | 幽霊日記 | Comments(0)

幽霊日記14

200万てーのはいいラインだ。
がんばれば結構用意できてしまう。

問題はそれを払った後。
渡したら最後、絶対次を要求される。そんで毟り尽くされすってんてん。

ちょっと相談。
男同士腹を割るには風呂と相場が決まってる。

湯煙に紛れ漂うまるっこいの。

金を返すか否や。
イエスなら右。ノーなら左。

上。

ざけんなよ。

とりあえず中とって100万。

車買えんなー。
うん。車買おう。そして逃げよう。

まるっこいのがふよふよ漂っている。
蛇口塞いで水を噴射。思いっきり鼻に直撃した。
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by zan9h | 2008-02-26 20:56 | 幽霊日記 | Comments(0)