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狐の嫁64

4月。
桜の蕾も綻びます。

「春か」

縁側に座り女に化けた狐が呟いた。なんだかニコニコ機嫌がいい。

「どうした?」
「いや、なにちょっと…な」

フフと笑う。風が吹く。うわっと春の気に思わず噎ぶ。

「ここに来て良かった」

唐突に彼女はそう言った。
聞き返す。流した眼が優しく微笑む。

「共に歩んでいることが、何よりも…幸いだ」

つつと指が這い、絡み、重なる。
体をぴたりと寄せられる。ゆっくりと瞳を閉じる。吐息が甘く鼻腔を擽る。

ああ。陽が暖かい。あったかいなー…。

「このすかぽんたん」

蹴られた。転落。地球との口付けは土の味がするヨ。

「パターン通り越してもうマンネリだろうが。大概にしとけ」

見れば狐。腰に手を当て仁王立ち。あれ?

「はっはっはっ!」

高笑いに目を遣れば…バニースーツのバニーちゃん。
桜の木の上で鬼の首でも取った如く踏ん反り返ってる。

「引っ掛かったな四月馬鹿!このバーカ、バー…」

ボキリ枝が折れ、ヒューと落下して、ドシャンのバタンでキュー。
…。えっと…。

「今日どころか、年中バカだな」

狐は兎の頭をギュと踏むと、呆れ声でこーんと鳴き、くるり回転してどろんと消えた。

「うっうっ、うえ~ん」

…どうしよう。
とりあえず赤チン塗ってあげたら、お礼に飴くれた。

by zan9h | 2009-04-01 21:00 | 狐の嫁 | Comments(0)