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狐の嫁63

川縁の高架橋下におでん屋台を見つける。
キュッと一杯、温まろう。そうしよう。

「ここいらの葦は片葉なんですよ」

オヤジが具を見繕い言った。
見れば確かに河原に生えた葦は一方にしか葉が付いていない。

「昔、刃傷沙汰がありましてね」
「はあ」
「好いた女が自分に振り向いてくれねぇてんで、男が女を斬っちまったんです」

ああ。いわゆる痴情のもつれてやつだ。

「片手片足バッサリ。以来、死んだ女の恨みか生える葦はあんなでさあ」
「へえ」

おまちと、おでんと酒。
大根、はんぺん、ちくわぶにタマゴ…みんな半分。コップん中も半分。

「これはどういう?」
「見ての通りで」
「はい?」
「御代は半分で結構。その代わり」

クククと笑い身を起こしたオヤジの顔は半分…

「おまえをはんぶ」
「ほいさっさーっ!」

パンチ一発、顔面クリーンヒット。もんどり打って吹っ飛ぶオヤジ。
目の前には女に化けた狐。キルビルなジャージ着て空手のポーズ決めてる。

…。なんか前にも似たようなことがあったような。
ハアと狐がため息を吐く。

「知らない奴の言うことは、話半分に聞いときな」

狐は正拳突きを空に放つと、こーんと鳴いてくるり回転しどろんと消えた。

壊れた屋台がポツン。
葦の間をまるい尻尾がカサカサ逃げていった。

by zan9h | 2009-03-28 22:34 | 狐の嫁 | Comments(2)

Commented by d56 at 2009-03-29 01:06 x
狐の生い立ちが気になる
Commented by zan9h at 2009-03-29 17:56
あんま気にせんでいいアルカンフー
4と15でちょこっと