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狐の嫁31

だらだら坂をだらだら上がる。
相変わらずだらだら長い坂だ。

「豚カツが食べたい」
「そんな金は無い」

切り返すも狐が広告を目敏くチョイス。デパ地下の有名店が10周年記念とかで半額。
こりゃ買うしかないといつもの貧乏根性、帰りはお約束の急な坂をだーらだら。

真夏よりはマシか、と思った矢先。
ふわり足元が浮いた。

何事だ?、と思考する間も無くゴウと耳を劈く轟音。くるんと天地が逆転する。

「な?な?な?」

風が吹き抜けた。物凄い突風。
坂を転がりそうになるも、電柱にしがみ付きなんとか凌ぐ。

助かったと合掌して気付く。アレ?マイエコバッグは??

「窮奇(カマイタチ)だね」

見れば女に化けた狐。ヘソ出しシャツにショートパンツ。マイエコバッグ持ってる。

「人を切り裂く魔風の妖し」
「…どこも切られて無いが」

肌が露出した箇所を探るが、傷は無い。

「それはね」

ククと喉を鳴らして笑う。アレ?前にも…。

「隙を突くためさ!」

狐はポンと煙を上げると鼬(イタチ)になった。
マイエコバッグ咥えて路傍の茂みにスタコラサッサー。

「げーっ!」

またかーっ。

「相も変わらず獣はやる事が抜けてる」

見れば狐。秋桜柄の肩紐ノースリーブにヒラヒラスカート。豚カツ入ったプラパック持ってる。

「えっと、今度は本物ですよね?」
「たわけ。毎度偽者に騙されおって」

このピチピチこそ本物だ、とポーズ決めた矢先。
風が吹いた。で、捲れた。

「…白」
「!!!」

バチーンと平手一発、狐はこーんと悲鳴を揚げると、くるり後ろを向き、どろんと消えた。

狐が落としたパックを拾い、一切れ茂みに投げてやった。
風が吹き、マイエコバッグが降ってきた。

by zan9h | 2008-09-04 11:53 | 狐の嫁 | Comments(0)