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狐の嫁28

祭りの帰り。

橋を渡る途中、妙なものを見る。

花火。
スターマイン、ナイアガラ、流星ロケット…。

色取り取りの火花が華麗に散れども、音は無し。
それもそのはず、実際には上がっていないのだから。

夜空には月が輝くばかり。
打ち上がっているのは川の方。水面に花火の画が映っている。

「花火の幽霊とは珍しい」

女に化けた狐が言った。浴衣姿でワタアメ食ってる。

「これ幽霊なのか?」
「何もこの世に未練があるのは人だけとは限らないよ」

意味深に狐が笑う。
まあ、こういう怪異なら歓迎だ。綺麗だし。

ふと見上げると、ひょろひょろと昇る青い閃光。

「お?本物か?」
「本当だ。ありゃ本物の人魂だ」

狐はこーんと鳴くと、くるり回転し、どろんと消えた。

…マジ?
ひ、ひーっ。

by zan9h | 2008-08-18 22:37 | 狐の嫁 | Comments(0)