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狐の嫁10

ハモは白焼き、ドジョウは柳川、そしてウナギ。

土用の丑の日に代表されるように食として広く愛される。
脂の乗った身は精が付き、多くに好まれる。

うまい。焼いた皮が香ばしく、身はとっても柔らかジューシー。
何よりあの甘塩っぱいタレが絶品だよね。

ウナギさいこー。

ところで冷蔵庫の中身が空だった。
すっかり何一つ無い。

「貴様、全部食い尽くしやがったな!」

狐が何食わぬ顔で茶を啜る。

「腹が減ったねぇ」
「大概にしろよ、この妖怪」

布巾を投げつける。
狐は飛び上がってひらりかわすと、ポンと女に変化した。

「な、なんだよ」

ズイと詰め寄り、ガバと抱き付き、ムニと唇を…奪われた。

「!?むぐぐぐっ???」

ズズと吸われること幾星霜、漸くちゅぽん。
女は尻尾を咥えていた。長い胴の向こうはこっちの口。

「ぐへい」

蛇が出た。口から。しかもまるまる肥えたでかい奴。吃驚仰天腰抜かす。

「蟒蛇(うわばみ)だ。誰かさんに憑いて皆平らげた」

たわけと女狐が溜息を吐く。

「こいつ貰うぞ。蒲焼にする」
「…どうぞ」

台所で狐がこーんと鼻歌奏でる。くるり換気扇が回転し、どろんと黒煙を散らす。

グウと鳴る腹の虫。

「半分やろうか?」
「いらないやいっ」

by zan9h | 2008-05-17 22:38 | 狐の嫁 | Comments(2)

Commented by d56 at 2008-05-17 23:58 x
主人公の口から出たってことだよね?
Commented by zan9h at 2008-05-18 22:17
なんでも飲み込んじゃうんで、大食漢を指しますね。
あと大酒呑み。

ウナギはあまり好きじゃないです。
脂ぽい。食っててなんかむかつく。無論、蛇は食べませんよ。