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狐の嫁85

雨ザーザー。

屋根付きバス停で一服してると誰かが隣に座った。
なんか前にも似たような…と見れば案の定前会ったおっさん。雨ん中踊ってた人。

「誰のせいでもないのに誰かのせいにしてしまうことってありますよね」

唐突になんですと?

「飢饉があったんです」
「はい?」
「日照りが続いたせいでお米が取れなかったんです」
「はあ」
「多くの人が死にました」
「…」

何を語ってるんだ、このおっさんは。

「苦痛には受け皿が必要なんですよ」
「えっと、仰ることの意味がよく…」

「ご利益の無いモノを祀る必要がありますか?」

…。ああ。なんとなくわかった。
煙を吐く。フフとおっさんが悲しく笑う。

「妻に逃げられました」
「脈絡が無いわっ!」

「ジメジメジメジメうざいって言って出てったんですぅ」
「知らんがなっ!」
「もうこうなったら踊るしかないじゃないですか」
「なんで!?」

手を引かれ、またもや土砂降りん中をクルクルクルリン。

「たーのーしーなー」
「たのしくねーよ!」

ステップに躓き、水溜りにバッシャン。
そんで、周りを見やればおっさんの影も形もなし。代わりにまたしてもバニー。

白い目で見なさるので事情を説明する。

「そりゃ長梅雨なわけだ」
「なんで?」

「稲妻が無けりゃ夏が来ない」

頑張りな、と兎に肩を叩かれた。…なんだってんだ、いったい。

冷たさに、くるり背を見るとどろんと泥だらけ。
落ち着こうと取り出した煙草はびしょびしょ。あーもう、こーん!

by zan9h | 2009-08-04 21:16 | 狐の嫁 | Comments(0)